妖精のうわさ話

妖精のうわさ話


 あの吹雪の晩の後に初めてモンスターの学校を訪ねたのは、小さな湿った吹雪が南からやってきて、そして通り過ぎた日のことだった。みぞれを巻き上げる突風はあの晩とは違い、確かに春が近づいていることを知らせていた。
 冬の間にかさなって洞窟の入り口を塞いでいる雪も少しずつ溶けはじめ、モコモコが一匹入り込む程度の入り口なら、魔法を使わずとも作ることができる。
 学校ではちょうどひと仕事ついた先生たちがお茶の準備をしているところだった。ゼゼとクルルファ先生は再会を喜び、オンドルファ先生も微笑んで迎えてくれた。
 雪の中で冷え切った体に、ハーブティーの熱がじんわりと染み込む。
「そう言えば、マイスさん。あの晩に何か見ませんでしたか?」
 冬の間の出来事を話していたクルルファ先生がふと、何かを思い出した様子で突然そう尋ねるので、僕は内心どきりとした。
「えっ、いえ、特に何も……。何かあったんですか?」
「ペリが真夜中に見たと言うんです、男の子の影を……」
 ──まさかあの時、見られていたのか。心臓が一瞬にして凍りつく。
「朝に吹雪が止むと、すっかり冬の世界になってしまったでしょう。あの子は、その男の子が冬を運んできた雪の妖精に違いないって目をキラキラさせて言うんですよ」
 クルルファ先生はペリの様子を思い出し、いとおしんで笑った。
「フェアリーやピクシーたちの間には、季節を運ぶ妖精の伝説があるそうなんです」
 冬を運ぶ妖精はいたずら好きな男の子なのだとオンドルファ先生がつけ加える。
 寂しい冬に伝説の妖精に出会えたら、たしかに彼女はとても喜ぶだろう。
 安堵にほっと息をついて、僕とオンドルファ先生はこっそり苦笑しあった。