燈火と流れ星

燈火と流れ星


「あの、もしよければなんですけど……」
 あることを思いついて、言いかけながら鞄の中を探る。蝋燭の火が照らす暗がりの中、目当てのものを見つけてオンドルファ先生に見せた。
「また宿題を教えてほしくて……。向こうの学校の、なんですけど」
「ええ。私にわかることなら」
 オンドルファ先生はほんの一瞬だけ目をまるくして、それからすぐ、いつもの静かな微笑みで頷いてくれた。僕は本当はただその表情を見たくて、誰もいない時を見計らってこんな我儘を言うことがあった。
 いつもは僕の見知らぬ言葉で綴られた書物が並ぶ机に、今は、見飽きた魔法学の教科書とノートを広げる。
 ペンを走らせながらこっそり、オンドルファ先生の横顔を盗み見る。文字を追うその瞳に時々、特別なきらめきが浮かぶのを見逃したくなかった。それは流れ星のように心を惹きつけて、舞い上がらせるような何かを秘めた、刹那の光だった。
 ここで暮らしていると人間の世界の本を手に入れる機会は殆どないのだと、いつか彼が言っていた。
 それを思い出すと、授業中にページを捲るときの感慨さえ、以前とはどこか違う。僕の瞼の裏でもあの光がひと粒、きらりと瞬く気がする。