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No.11

いたみ / 風虚

#羅小黒戦記


「虚淮は、恋をしたことってあるか?」
 まるで小さな子供のようなかわいらしい問いだった。
 風息がまだ虚淮に抱きかかえられるくらいだった頃、四六時中、未知のものに無邪気に目を輝かせて、虚淮はその一つ一つに答えたものだ。その中にはこんな質問もあったのかもしれない。
 けれど今、自分を見下ろす彼の表情は不安そうにこわばっていた。見上げるほどに背が伸びて、強くりっぱな妖精になったというのに。
「どうだろう。覚えていないということは、ないんじゃないか」
 そうか、と風息はまた浮かない顔をする。それが傷が痛むときの表情と似ている気がして、考えるよりも先に手が伸びた。虚淮には痛みがわからないから、余計に心配になる。特に成長して弟分たちができてからの風息は我慢強くなった分、ひとりで無理をしてばかりいる。
 額まで届かずに、代わりに頬に手を触れる。子供の頃のままの高い体温、その下を彼の気が流れているのを感じる。樹木が水を吸い上げて、枝や葉の間を巡らせる様を思う。
 その手の上に風息が手を重ねて、痛みを堪えたまま笑う。虚淮には痛みがわからない、けれど、親心がたしかにきゅう、と締め付けられるのがわかった。



2021年頃のメモを見つけたので加筆修正してみました。
恋愛感情はなく慈愛を注いでくれる相手に恋をしてしまう攻め……年下→年上CP毎回こういう話になってしまう〜〜〜。趣味全開。

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